帰りたくなる味がある。居酒屋きよじ|焼津市治長請所
焼津市の治長請所。先日稲荷神社で初めて訪れた町だ。
JR焼津駅や西焼津駅から少し離れたこのまちは、観光客が通るような通りではない。
でも、ふとした角にぽつんと灯るあかりに、足が止まることがある。
そのあかりの先にあったのが、「居酒屋きよじ」。
看板の明かりは控えめだけど、にじむような温かさがそこにはあった。
店内にはL字型のカウンター。
地元の常連さんたちが、それぞれのペースで会話を楽しんでいる。
奥の厨房では、男性の店主が一人でてきぱきと料理をこなしていた。
何気ないやりとりの中で、
常連さんがその店主のことを「きよちゃん」と呼んでいるのが耳に入った。
ああ、この人が“きよじ”の「きよちゃん」なのか――
初めての訪問だったけれど、その一言で少し心がほどけた気がした。
ミナミマグロとネギトロの盛り合わせ
メニューにあったおすすめの文字。
ミナミマグロとネギトロの盛り合わせ。800円。
厚切りのマグロは艶やかで、見た目から鮮度の良さが伝わってくる。
口に入れると、しっとりととろけて、舌にまとわりつくような旨み。
食べるたびに「もっと味わっていたい」と思わせてくれる。
これはただの“刺身”じゃなくて、“ごほうび”だった。
オムライス
ふわふわのオムライス。900円。
ネットで「居酒屋きよじ」と検索すると、ほぼ確実にこのメニューが出てくる。
「ネットをやらないからわからないんだけど、誰かがオムライスの画像を載せたから、調べるとそれが出てくるみたい」とのこと。
どうやらこの店の代名詞となってしまったようだ。
卵はとろりと柔らかく、ケチャップライスには玉ねぎとしめじがたっぷり。
懐かしさの中に、ひとつひとつの丁寧な仕事が感じられる。
別添えのケチャップで味の変化も楽しめるのが嬉しい。
この一皿に、店主・きよちゃんの“まじめなやさしさ”が詰まっている気がした。
懐かしのフライたちと、うまい棒の思い出
学校給食で一番好きだった、ハムチーズフライ。250円。
それを、大人になってこの店で再会できるなんて思ってもみなかった。
カリッと揚がった衣の中に、とろけるチーズとハム。
一口ごとに、思い出が蘇るような味だった。
焼津名物の黒はんぺんフライは、ザクッとした衣にむっちりした弾力。
これが80円というのもまたうれしい驚きだった。
そのあと、カウンターの常連さんが帰り際に、
「これ、あげる!」と、うまい棒(熟成ステーキ味)を手渡してくれた。
たったそれだけのやりとりなのに、
このお店の空気と、そこにいる人たちのやさしさが、ぎゅっと詰まっていた気がした。
通いたくなる理由が、ちゃんとある
この店には、オムライスや刺身といったメニューの魅力だけじゃない、
“帰ってきたくなる理由”が、ちゃんとある。
地元を離れた人が、帰省のたびに顔を出す。
飲食店が少ない近隣地区から、通い続ける常連さんもいる。
その中心にいるのが、店主・きよちゃん。
静かに、ひとりで、厨房を守っているその姿が、どこか頼もしい。
帰り際、「石津の寿司屋“真駒(しんこま)”も美味しいよ」と教えてくれた一言に、
また次の楽しみができた気がした。
店舗情報(2025年4月現在)
- 店名:居酒屋きよじ
- 所在地:〒425-0067 静岡県焼津市治長請所75-2
- 営業時間:17:00〜23:00
- 定休日:木曜日
- 営業体制:店主・きよちゃんが平日は一人で営業。週末はお手伝いが入ることも。
- アクセス:車またはバス利用が便利(バス停「中新田配水場」から徒歩圏内)
- 駐車場:広い
地図
まとめ
刺身、オムライス、懐かしのフライ、そしてうまい棒。
どれも、あたたかくて、安心できる味だった。
きよじは、ただ食べる場所じゃない。
「また帰ってきたい」と思わせてくれる、まちの灯りみたいな店だ。