八重枠稲荷神社を訪れて—大井川の歴史と神仏習合の面影を感じる静かな参拝スポット
2025年1月18日、やぎさん主催の「はとばの朝活」に参加しました。島田市の大井川河川川越広場に集合し、旧東海道川越遺跡を歩いてツバキコーヒーへ向かう道中、偶然見つけたのが「八重枠稲荷神社」です。今回の参加者の皆さんは私が神社ブログを書いていることをご存知で、一緒に立ち寄って楽しんでくださいました。
大井川沿いの穏やかな風景と、どこか懐かしさを感じる境内が印象的な神社でしたので、今回はその魅力をご紹介します。
詳細・基本情報とアクセス
基本情報
- 名称:八重枠稲荷神社(やえわくいなりじんじゃ)
- 住所:静岡県島田市河原1-14-6
アクセス
公共交通機関の場合
- JR東海道本線「島田」駅から徒歩約31分
駅前からタクシーを利用すると、もう少しスムーズにアクセスできる可能性があります。
車の場合
- JR東海道本線「島田」駅より車で5分
- 国道1号「向谷」インターより車で5分
神社の専用駐車場がありません。島田市博物館、島田宿大井川川越遺跡の訪問として島田市博物館の駐車場をご利用いただくか、公共交通機関のご利用をおすすめします。
地図
由緒・御祭神・ご利益
歴史と由緒
八重枠稲荷神社は、総本社を京都市伏見区の伏見稲荷大社として、1760年(宝暦10年)に川越衆(川を渡る人足や旅人)の安全と事故の排除を祈願して建立されたと伝えられています。当時は「八重枠稲荷大明神」と称されていましたが、明治維新の際に「稲荷神社」と改称されました。また、鎮座地名にちなみ「善太夫島稲荷」とも呼ばれていた記録が残っています。
大井川の洪水対策として、蛇籠(じゃかご)に石を詰めて杭で固定し、これを何重にも並べて堤防を補強していたことが、この神社の名前の由来だと言われています。八重枠稲荷神社は、水難排除の願いとともに、大井川を渡る諸大名や多くの人々の無事祈願の場として信仰されてきました。
また、一般的な稲荷神社と同じく2月の初午を祭日としていますが、かつては川で亡くなった方々の供養も重要な目的だったと推察されています。以前は例祭日が3月の春分の日に定められていた記録もあります。
社殿は1812年(文化9年)と1901年(明治34年)に修繕され、石積みには大井川で拾われた石を亀甲型に加工したものが使用されています。この石積みは高度な職人技が光るもので、現在では数か所にしか残っていない歴史的価値の高いものです。
御祭神
倉稲魂命(うかのみたまのみこと)
宇迦之御魂神と同一視されることが多い神様で、稲荷神です。五穀豊穣や商売繁盛などのご利益があるとされます。
ご利益
- 商売繁盛
- 五穀豊穣
その他、厄除け・家内安全など、一般的な稲荷神のご利益が期待できます。
境内の様子と雰囲気
鳥居
稲荷神社らしく、鮮やかな赤が目を引きます。「開運おみくじ」「大願成就」ののぼり旗も立ち並び、参拝者を迎えてくれます。
手水舎
金谷在住の彫刻家・土屋誠一さんによって寄贈された石造りの手水鉢は立派な造りで、旧東海道川越街道の賑わい創出にも一役買っているようです。
左側にあるやや大きめの石が、以前使われていた手水鉢とのことで、昔のままの姿を今に伝えています。
狐像
こちらも土屋誠一さん作です。柔らかい石の質感と丸みを帯びたフォルムが可愛らしい印象で、写真に収めたくなるスポットです。
拝殿
木造の落ち着いた雰囲気があり、正面にはしめ縄と紙垂(しで)が飾られていて、稲荷大明神ののぼり旗が立っています。横の壁には大きな絵馬や奉納画と思われるカラフルな作品が掲げられ、右側には絵馬掛けが設置されているのがわかります。屋根には和瓦がしっかりと組まれており、神社らしい伝統的な趣を感じさせます。
拝殿の屋根には狐瓦があしらわれ、堤防に穴を開けるモグラの天敵である“お狐さん”がシンボリックに配置されています。
八重枠不動尊
拝殿の右奥に位置する小さなお堂には、「八重枠不動尊」の扁額が掲げられています。
神仏習合の名残なのか、稲荷神社の境内に不動尊が祀られる例は珍しくありません。地域を守護する存在として今も大切に祀られています。
本殿と裏の公園
裏手の公園を含む神社の境内には狐面が飾られており、探しながら参拝するとちょっとした宝探し気分が味わえます。
石灯籠
奥の公園の方に行かないと気つきませんが、本殿横に石灯籠が設置されています。風雨を経た石の質感が歴史を感じさせます。
御朱印
印の周囲には「神社名」として「八重枠稲荷神社」の文字がデザインされています。左上には梅の花や松、鯛が描かれており、縁起の良さが際立っています。右下には赤い前掛けを付けた二体のお狐さまが描かれており、稲荷神社らしさを感じさせます。
こんな方におすすめ
- 大井川周辺の歴史や文化に興味がある方
- 稲荷信仰(商売繁盛・五穀豊穣)を大切にしたい方
- 旧東海道の散策や川越し街道を歩いてみたい方
まとめ
今回、やぎさん主催の朝活で旧東海道を歩く途中に訪れたこともあり、参加者の皆さんと歴史を感じながら散策できたのはとても楽しい体験でした。みなさんも島田市の大井川川越遺跡を訪れる際には、ぜひ八重枠稲荷神社まで足を伸ばしてみてください。大井川の風情と相まって、きっと心に残る参拝となることでしょう。