久留米

焼津からつながる水の神様へ|久留米・水天宮総本宮を訪ねて

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焼津にもある「水天宮」。

地元で親しんできたこの神社の総本宮が福岡・久留米にあると知ってから、いつか訪れてみたいと思っていた。

今回、出張の前泊で久留米に滞在する機会があり、その願いを叶えることができた。

アクセスはややタイト、でも歩いて行きたい

宿泊していたホテルでは朝食が6時30分からスタート。

開始と同時に食事を済ませて、すぐにホテルを出発した。

歩くのは好きな方だけれど、今回ばかりは少し急ぎ足になる。

というのも、9時までにJR久留米駅から鹿児島本線に乗って瀬高駅まで移動しなければならなかったからだ。

西鉄久留米駅近くの宿泊先から歩いておよそ50分。

気持ちのいい朝だったけれど、時間に追われているとやはり少し遠く感じる距離だった。

水天宮の鳥居。ただならぬ雰囲気を感じた

狛犬の多さと個性に驚く

境内に入ってまず目を引いたのが、たくさんの狛犬たち。

しかも一体一体すべて形が違っていて、それぞれに個性がある。

表情、ポーズ、大きさ、すべてがユニークで、見ているだけでも面白かった。

中でも、水神社の前にいた狛犬には「触ると体の悪い部分が治る」という言い伝えがあるそうで、自然と手を伸ばしていた。

神職の方との静かな会話

境内の清掃をしていた神職の方に声をかけていただき、少しだけ立ち話をすることができた。

焼津にも水天宮があり、そちらに親しんでいること、この総本宮を一度見てみたくて来たことを伝えると、

「静岡には学生時代の友人がいるんですよ。いつか行ってみたいと思ってるんです」と、逆に静岡への興味を話してくださった。

まさか久留米で静岡の話をするとは思っていなかったけれど、こういう小さなやりとりが旅の記憶に残る。

水天宮の御祭神と由緒

水天宮の御祭神は、全部で四柱。

壇ノ浦の戦いで幼くして入水したとされる安徳天皇を中心に、母である建礼門院(平徳子)、祖母の二位の尼(平時子)、

そして宇宙の中心神とも言われる天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)が祀られている。

この水天宮の創建に深く関わったのが、按察使局伊勢(あぜちのつぼね いせ)という女性。

壇ノ浦の戦いの後、筑後川のほとりの鷺野ヶ原に逃れ、安徳天皇の御霊を慰めるために祠を建てたのが始まりとされている。

彼女は後に出家して千代と名乗り、「尼御前(あまごぜん)」と呼ばれた。

この方が初代宮司となり、水天宮の信仰が広がっていった。

水の神さまとして、安産や子どもの守護、火難除け、厄除けなどの御利益があり、

地元では“暮らしの神さま”として親しまれているのも焼津と共通している。

水天宮の拝殿正面

歴史にも惹かれる水天宮

女性が初代宮司というだけでも珍しいが、水天宮にはさらに深い歴史がある。

毎年8月5日には筑後川で大きな花火大会が開催される。

これは水天宮の例祭にあわせて行われるもので、水天宮のための花火なのだという。

神職の方が話していた印象的な言葉がある。

「東京の水天宮が総本宮だと勘違いされることが多いんですよ」

実際、東京・日本橋の水天宮は有名で参拝者も多いが、あちらはこの久留米水天宮から分祀されたもの。

本家である総本宮は、福岡県久留米市にあるこの水天宮なのだと、あらためて知った。

境内には「真木神社」という境内社もある。

真木神社

ここに祀られているのは、眞木和泉守保臣命(まきいずみのかみやすおみのみこと)。第22代宮司・真木保臣(まきやすおみ)だ。

幕末の志士としても知られる人物で、社のそばには立派な像も建っていた。

京都・大山崎町には彼の墓所もあるらしい。

真木保臣の像。尊敬の気持ちが今も感じられる。

焼津からつながるご縁のような時間

限られた朝の時間だったけれど、訪れてよかったと思えた。

焼津の水天宮がずっと身近にあったからこそ、その総本宮に立ち寄れたことに意味を感じる。

たくさんの狛犬と、やさしい神職の方との会話。

出張前の慌ただしさのなかに、すっと心が整うような時間があった。

今度はもう少し時間に余裕を持って、またこの場所をゆっくり歩いてみたい。

神社情報

  • 神社名:水天宮(すいてんぐう)〈総本宮〉
  • 住所:福岡県久留米市瀬下町265-1
  • 御祭神
    • 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
    • 安徳天皇(あんとくてんのう)
    • 建礼門院(けんれいもんいん/高倉平中宮)
    • 二位の尼(にいのあま)
  • 由緒
    • 壇ノ浦の戦いで入水した安徳天皇と平家一門を祀るため、女官・按察使局伊勢(あぜちのつぼね いせ)が筑後川の地に祠を建てたのがはじまり。のちに剃髪して「千代」と名乗り、尼御前と呼ばれた。水・子ども・安産・火難除けの神として信仰される。
  • 年中行事:毎年8月5日筑後川花火大会ほか多数
  • アクセス:西鉄「久留米駅」から徒歩約20分/JR「久留米駅」から徒歩約15分
  • 参拝時間:境内自由(授与所・御朱印受付は要確認)
  • 境内社
    • 真木神社(水天宮第22代宮司・眞木和泉守保臣命だけでなく、明治維新に際 し国難に殉ぜられた一門及び門下生と、 天王山にて共に自刃された方々を祀る)
    • 水神社(水徳の神様である、彌都波能売神、安産の神様である、鵜 葺草葺不合命の二柱を祀る)
    • 千代松神社(水天宮初代宮司・按察使局伊勢命を祀る)
    • 秋葉神社(農耕・文芸の神である、阿遲鉏高 日子根命を祀る)
  • 備考
    • 狛犬のバリエーションが豊富で見応えあり
    • 水神社前の狛犬は「体の悪い部分を癒す」との言い伝えあり
    • 東京・日本橋の水天宮は久留米からの分祀。総本宮は久留米市なので注意!
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みきと
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みんなの図書館さんかく名誉副館長/己書道場師範/星空案内人
麺と星空とコーヒーをこよなく愛しております。
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